獣求獣医求人ポスト
TOP求人一覧AI相談ブログツール無料掲載
獣医求人ポストVet Post
  • 求人一覧
  • AI相談
  • ブログ
  • 無料掲載
  • スポンサー募集
  • お問い合わせ
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

© 2025 獣医求人ポスト(Vet Post)

運営会社情報

リサーチコーディネート株式会社

東京都新宿区西新宿1-20-3 西新宿高木ビル8F

お問い合わせ:contact@research-coordinate.co.jp

ホーム›ブログ›デジタル獣医療
デジタル獣医療の記事イメージ
デジタル獣医療

Photo: Jorge Chan / Pexels

デジタル獣医療2026-06-04・約11分で読めます

獣医デジタル病理の全体像 — WSI・AI診断・遠隔病理はどこまで来たか【シリーズ序論】

獣医療で急速に広がるデジタル病理について、全スライドイメージング(WSI)の基礎、普及を後押しする要因、IDEXX/Antechの遠隔細胞診やOncoPetNet等のAI画像解析、導入の課題と検証(バリデーション)までを、一次情報源を示しながら俯瞰するシリーズ序論です。

文:獣医求人ポスト編集部公開 2026-06-04
目次
  1. デジタル病理とは — 全スライドイメージング(WSI)の基本
  2. なぜ今、獣医療で広がっているのか
  3. 臨床現場での実装 — 遠隔病理・デジタル細胞診
  4. AIの役割 — 画像解析はどこまで来たか
  5. 課題と検証(バリデーション)
  6. 本シリーズの今後(予定)
  7. 参考文献・一次情報源
獣医デジタル病理の全体像 — WSI・AI診断・遠隔病理はどこまで来たか【シリーズ序論】のイメージ
Photo: Jose Centenera / Pexels

顕微鏡のガラス標本をデジタル画像に変換し、コンピューター上で閲覧・共有・解析する『デジタル病理』が、獣医療でも急速に実用段階へ入っています。遠隔病理(テレパソロジー)による即時のコンサルトや、AIによる分裂像カウントの自動化など、診断のスピードと再現性を変えうる動きが、すでに大規模診断ラボや一次診療の現場で動き始めました。

本シリーズについて
本記事は『デジタル獣医療』シリーズの序論です。まず全体像を俯瞰し、以降の記事でWSI技術・AI画像解析・導入の実務・検証と品質保証などを順に深掘りします。各回とも一次情報源(査読論文・学会指針)を示しながらまとめます。

デジタル病理とは — 全スライドイメージング(WSI)の基本

デジタル病理の中核は『全スライドイメージング(Whole Slide Imaging:WSI)』です。専用スキャナがガラス標本全体を高解像度で撮像し、拡大・移動が自在な1枚の大容量デジタル標本(バーチャルスライド)を作ります。これを画像管理システムに保存し、ビューアで閲覧・注釈し、必要に応じて画像解析やAIにかけ、ネットワーク越しに共有します(Zuraw & Aeffner, 2022)。

  • スキャナ:ガラス標本をWSI化する装置(明視野が中心、蛍光対応機もある)
  • WSI(バーチャルスライド):拡大・パン操作ができる高解像度のデジタル標本
  • 画像管理システム:大容量画像の保存・検索・症例管理
  • ビューア:閲覧・計測・注釈を行う表示ソフト
  • 画像解析/AI:分裂像カウント、免疫染色の定量、領域検出などの自動化
デジタル病理の基本ワークフロー
ガラス標本の作製(染色まで)
スキャナでWSI化(デジタル化)
画像管理システムへ保存・管理
ビューアで閲覧・計測・注釈
(任意)AI・画像解析で定量・スクリーニング
レポート作成・遠隔共有・コンサルト

なぜ今、獣医療で広がっているのか

背景には需要と供給の双方の事情があります。コンパニオンアニマルの症例数は増え続ける一方、診断を担う獣医病理専門医(認定医・専門医)は世界的に不足しており、迅速なコンサルトへの期待も高まっています。さらに製薬・CRO(受託研究)の毒性病理では、標準化された読影と定量が求められ、デジタル化が前提になりつつあります。

  • コンパニオンアニマルの症例数・病理検体の増加
  • 獣医病理専門医の不足と地域偏在(遠隔で補完するニーズ)
  • 遠隔コンサルトの『即時性』への期待(数時間での返却)
  • 製薬・CROの毒性病理における標準化・定量・監査対応

臨床現場での実装 — 遠隔病理・デジタル細胞診

大手の検査会社はすでにデジタル細胞診サービスを展開しています。IDEXXのDigital Cytologyは、院内で作製した標本をスキャンして送信すると、100名超の獣医臨床病理医のネットワークにつながり、おおむね2時間以内に判読が返ります(VetConnect PLUS経由)。Antechも院内スキャナと参照ラボでデジタル細胞診を提供しており、両社とも年中無休・約2時間の返却をうたっています。2024年にはIDEXXがスライド作製を要しないAI細胞解析装置 inVue Dx を発表するなど、院内完結のAI診断も登場しています。

約2時間
遠隔デジタル細胞診の返却目安(IDEXX/Antech)
0.27分/枚
AI分裂像カウントの推論時間(OncoPetNet)
21.9%
AI併用で腫瘍グレード判定が変化した症例割合(研究)
用途内容例
遠隔病理/コンサルトWSI・細胞診画像を送って専門医が判読IDEXX/Antech のデジタル細胞診
一次診断ガラスを見ずWSIで確定診断認定ラボでの導入(検証が前提)
画像解析・定量分裂像・免疫染色・領域の自動定量OncoPetNet 等のAI
教育・研修同一標本を多人数で共有・反復学習大学・研修での活用
研究・毒性病理標準化された読影と定量製薬・CROの試験

AIの役割 — 画像解析はどこまで来たか

AI(深層学習)が最も成果を上げている領域の一つが、腫瘍の悪性度評価に使う分裂像(mitotic figure)のカウントです。OncoPetNetは大規模な獣医診断ラボで分裂像カウントを自動化し、2施設で1日あたり数千枚規模のWSIを処理する運用が報告されています。コンピューター支援による分裂像カウントは観察者間の再現性と正確性を高め(Bertram et al., 2022)、ある検討ではAI併用により約2割の症例で腫瘍グレード判定が変わったと報告されています。AIは標本全体を短時間で走査し、『最も分裂が活発な領域』を見つける作業を人より安定して行える点が強みです。

AIは『置き換え』ではなく『補助』
現状のAIは分裂像カウントのような限定タスクで力を発揮しますが、最終診断は病理医の責任で行うのが原則です。AIは定量・スクリーニング・再現性向上で病理医を支え、より高次の判断に時間を割けるようにする位置づけです。

課題と検証(バリデーション)

実装には乗り越えるべき課題があります。診断にWSIを用いるなら、スキャナ・ソフト・ネットワーク・表示ディスプレイを含めて各施設で検証(バリデーション)する必要があり、ヒト病理で確立した手順を獣医に援用するのが一般的です。ただし獣医領域では一次診断のための検証研究がまだ少なく(telepathology scoping review, 2024)、品質保証の枠組み整備が進行中です(ASVCP指針など)。

  • スキャナ・ソフト・ネットワーク・ディスプレイを含む施設ごとの検証が必須
  • 獣医での一次診断向けの検証エビデンスがまだ限定的
  • 細胞診は3次元的で厚みがあり、組織標本よりスキャンが難しい
  • 初期投資・画像ストレージ・標準化・相互運用性のコスト
  • 規制・品質保証、病理医とスタッフのトレーニング

本シリーズの今後(予定)

次回以降では、以下のテーマを一次情報源とともに深掘りしていきます。

  • WSIスキャナと画像のしくみ(解像度・色・ファイル形式・ストレージ)
  • AI病理の実際と限界(分裂像・グレーディング・免疫染色定量)
  • 遠隔病理・デジタル細胞診の導入実務(ワークフローとコスト)
  • 検証と品質保証・規制(バリデーションの進め方)
  • 教育・研究・毒性病理への応用

病理・腫瘍領域に関心がある方は、診断病理に注力する二次診療施設や検査ラボでの経験が学習を加速させます。獣医求人ポストの検索から、病理・腫瘍に強い施設を探せます。

参考文献・一次情報源

  1. Zuraw A, Aeffner F. Whole-slide imaging, tissue image analysis, and artificial intelligence in veterinary pathology: An updated introduction and review. Veterinary Pathology, 2022.(Veterinary Pathology)
  2. Piccione J, Anderson SF, Neal SV, Varvil MS. Digital pathology in veterinary clinical pathology: A review. Veterinary Clinical Pathology, 2025.(Veterinary Clinical Pathology)
  3. Bertram CA, Klopfleisch R. The Pathologist 2.0: An Update on Digital Pathology in Veterinary Medicine. Veterinary Pathology, 2017.(Veterinary Pathology)
  4. Fitzke M, et al. OncoPetNet: A deep learning based AI system for mitotic figure counting on H&E stained whole slide digital images in a large veterinary diagnostic lab setting.(arXiv:2108.07856)
  5. Bertram CA, et al. Computer-assisted mitotic count using a deep learning–based algorithm improves interobserver reproducibility and accuracy.(PubMed)
  6. The use of telepathology in veterinary medicine: a scoping review.(PMC)
  7. ASVCP Quality Assurance and Laboratory Standards Guidelines(品質保証・標準化の指針)(American Society for Veterinary Clinical Pathology)

全国の動物病院求人を比較・検索できます

求人を探す

関連記事

臨床総説
犬の多中心型リンパ腫 — 診断・免疫表現型と化学療法 臨床総説
研究ダイジェスト
研究ダイジェスト Vol.1 — エビデンスの読み方と押さえておきたい重要研究
資格・キャリア
獣医師の生涯学習(CE/CPD)の進め方 — 学会・eラーニング・症例の活かし方