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臨床総説

Photo: Mikhail Nilov / Pexels

臨床総説2026-05-25・約7分で読めます

犬猫の角膜潰瘍 — 深度評価と治療、やってはいけないこと 臨床総説

犬猫の角膜潰瘍について、フルオレセイン染色による診断と深度評価(表層・実質・デスメ膜瘤・穿孔)、原因検索(乾性角結膜炎・眼瞼内反・異物・感染)、難治性のSCCED、融解性潰瘍という緊急病態、ステロイド点眼の禁忌を、一次情報源を示しながら総説としてまとめました。

犬猫の角膜潰瘍 — 深度評価と治療、やってはいけないこと 臨床総説のイメージ
Photo: Tima Miroshnichenko / Pexels

角膜潰瘍(角膜びらん〜潰瘍)は一般診療で頻度の高い眼科疾患です。多くは適切な対応で速やかに治癒しますが、深い潰瘍や融解性潰瘍は短時間で穿孔・失明に至る緊急病態になり得ます。『深さの評価』と『原因の特定』、そして『ステロイド点眼を避ける』ことが診療の要です。

本記事の位置づけ(必読)
本記事は獣医師・動物看護師向けの一般的な学習用総説です。点眼薬の選択・頻度・外科適応は症例と最新コンセンサスで異なります。実臨床では眼科の標準教科書・最新の知見と各製剤の添付文書を必ず確認してください。

診断と深度評価

フルオレセイン染色は基本検査です。色素が染まる範囲・深さで潰瘍を評価し、深部に進むほど緊急度が上がります。デスメ膜が露出した『デスメ膜瘤』はフルオレセインが中央で染まらず周囲だけ染まる像を示し、穿孔寸前のサインです。

深度所見の要点緊急度
表層びらん/潰瘍上皮欠損のみ。多くは数日で治癒低(原因治療が中心)
実質潰瘍角膜実質に及ぶ欠損中〜高
デスメ膜瘤デスメ膜が露出し膨隆、中央が染まらない高(穿孔寸前)
穿孔前房と交通、虹彩脱出など最緊急(外科)

原因を必ず探す

潰瘍は『結果』であり、背景に治療すべき原因があることが多い疾患です。原因を放置すると治癒しない・再発するため、初診で必ず検索します。

  • 外傷・異物(眼瞼結膜の精査、必要に応じ翻転)
  • 乾性角結膜炎(KCS):シルマー涙液試験で評価
  • 解剖学的要因:眼瞼内反、異所性睫毛、睫毛乱生
  • 三叉/顔面神経の異常、兎眼(閉瞼不全)
  • 感染(細菌・真菌・猫ではFHV-1など)
潰瘍へのステロイド点眼は禁忌
ステロイド(およびステロイド配合点眼)は角膜の治癒を遅らせ、コラーゲン分解を助長して融解・穿孔を招き得ます。フルオレセイン陽性の角膜にステロイドを使わないことは、眼科の基本中の基本です。

難治性の表層潰瘍(SCCED)

中高齢犬で、表層なのに治癒せず潰瘍縁の上皮が浮いて広がる病態は、特発性の難治性角膜上皮欠損(SCCED/いわゆる不顕性潰瘍・ボクサー潰瘍)と呼ばれます。基底膜の接着不良が原因で、単なる点眼では治りにくく、浮いた上皮のデブリードマンや格子状角膜切開などの処置が必要になります。

融解性潰瘍は緊急

感染や酵素活性により角膜実質が『溶ける』融解性潰瘍は、数時間〜日単位で急速に進行します。集中的な抗菌点眼に加え、コラーゲン分解を抑える目的の血清点眼などが用いられ、進行例では結膜フラップなどの外科的処置が必要です。穿孔リスクが高く、眼科専門施設への速やかな相談・紹介を検討します。

基本的な治療の組み立て

  • 原因の除去・治療(内反・異物・KCSなど)
  • 感染対策としての抗菌点眼(深い/融解では頻回投与)
  • 毛様体痙攣・疼痛に対するアトロピン点眼(散瞳・鎮痛目的)
  • 自己外傷の防止(エリザベスカラー)
  • 深部潰瘍・デスメ膜瘤・穿孔・難治例は外科/専門紹介を検討
学習のポイント
角膜潰瘍は『染めて深さを測る・原因を探す・ステロイドを使わない』が三原則です。表層単純潰瘍と、SCCED・融解性・デスメ膜瘤を見分け、緊急性のあるものを専門紹介につなげられることが眼科の安全な入口になります。

参考・一次情報源

  • 獣医眼科学の標準教科書
  • 角膜潰瘍・SCCEDの管理に関する総説・コンセンサス
  • 各点眼薬の添付文書
  • 日本獣医眼科カンファランス等の教育資料・セミナー

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