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臨床総説の記事イメージ
臨床総説

Photo: Mikhail Nilov / Pexels

臨床総説2026-05-25・約7分で読めます

周術期の疼痛管理 — 多角的鎮痛と痛みの評価 臨床総説

犬猫の周術期疼痛管理について、先取り鎮痛と多角的鎮痛(マルチモーダル)の考え方、痛みの評価スケール(Glasgow CMPS・猫の顔面表情スケール)、オピオイド・NSAIDs・局所/区域麻酔・α2作動薬・ケタミンの役割、NSAIDs使用上の注意を、一次情報源を示しながら総説としてまとめました。

周術期の疼痛管理 — 多角的鎮痛と痛みの評価 臨床総説のイメージ
Photo: Tima Miroshnichenko / Pexels

痛みの管理は動物福祉の中核であり、回復・合併症・在院日数にも影響する『治療』そのものです。周術期では、痛みが生じてから対応するのではなく、先回りして複数の機序に同時に介入する考え方が標準になっています。本稿で疼痛評価と多角的鎮痛の組み立てを整理します。

本記事の位置づけ(必読)
本記事は獣医師・動物看護師向けの一般的な学習用総説です。鎮痛薬の選択・用量・併用・禁忌は症例(年齢・腎肝機能・循環動態)と最新コンセンサスで異なります。実臨床ではWSAVA/麻酔関連ガイドラインと各製剤の添付文書を必ず確認してください。

2つの基本概念:先取り鎮痛と多角的鎮痛

  • 先取り鎮痛(preemptive):侵害刺激が加わる前に鎮痛を開始し、痛みの増幅(中枢感作)を抑える
  • 多角的鎮痛(multimodal):異なる作用機序の薬剤・手技を併用し、各薬剤を低用量で相乗的に効かせ副作用を抑える
なぜ多角的なのか
痛みは末梢の侵害受容から脊髄・中枢の伝達・修飾まで複数の段階を経ます。一つの薬で全段階を抑えるより、各段階に作用する薬を組み合わせるほうが、少ない用量で確実な鎮痛が得られ副作用も分散できます。

痛みを『評価』する

鎮痛は『投与して終わり』ではなく、評価して調整する反復プロセスです。動物は痛みを隠すため、妥当性が検証された評価スケールを用いて客観的・継続的に評価します。

  • 犬:Glasgow Composite Measure Pain Scale(短縮版CMPS-SF)など
  • 猫:Feline Grimace Scale(顔面表情スケール)、CMPS-Feline など
  • 行動・姿勢・反応・生理指標を組み合わせ、定時で再評価する
  • とくに猫は痛みのサインが乏しく、過小評価されやすい点に注意

鎮痛薬・手技の役割分担

薬剤・手技主な役割留意点
オピオイド中等度〜重度の急性痛の中心種類で強さ・作用時間が異なる
NSAIDs炎症性疼痛・術後鎮痛の基盤循環・腎・消化管に配慮、ステロイド併用回避
局所/区域麻酔神経ブロック・硬膜外で侵害伝達を遮断解剖と手技の習得が前提、効果が高い
α2作動薬鎮静と鎮痛の相乗循環抑制に注意
ケタミン(低用量)中枢感作の抑制(NMDA拮抗)補助的に併用
NSAIDsの使用条件を守る
NSAIDsは脱水・低血圧・腎機能低下・消化管疾患のある症例では慎重を要し、グルココルチコイドとの併用は避けます。周術期は循環動態が変動するため、適切な輸液と血圧管理のもとで投与判断します。

局所・区域麻酔の積極活用

局所麻酔薬による神経ブロックや硬膜外麻酔は、侵害刺激の伝達そのものを遮断する効果の高い手技で、全身麻酔薬や全身性鎮痛薬の必要量を減らせます。歯科・四肢・体表・開腹などで活用でき、多角的鎮痛の柱として近年とくに重視されています。

退院後の鎮痛とフォロー

術後の痛みは退院後も続きます。在宅での鎮痛(経口薬の用法、与え方)、安静・創部管理、痛みのサイン、再受診の目安を飼い主に具体的に伝えます。慢性痛(変形性関節症など)に移行し得る病態では、長期の疼痛管理計画につなげます。

学習のポイント
周術期鎮痛は『先取り×多角的×評価して調整』が原則です。とくに局所/区域麻酔の活用と、妥当性のある評価スケール(猫はGrimace Scale)を使い分けられることが、安全で確実な鎮痛の鍵になります。

参考・一次情報源

  • WSAVA Global Pain Council ガイドライン
  • AAHA/AAFP 疼痛管理ガイドライン
  • 獣医麻酔・疼痛管理の標準教科書、各疼痛評価スケールの原著
  • 日本獣医麻酔外科学会等の教育資料・セミナー

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