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臨床総説

Photo: Mikhail Nilov / Pexels

臨床総説2026-05-25・約7分で読めます

犬猫の歯周病 — 病態・ステージ分類とCOHATの考え方 臨床総説

犬猫で最も一般的な歯周病について、プラーク(バイオフィルム)から歯肉炎・歯周炎への進行、ステージ分類、全身麻酔下での口腔精査・歯科レントゲン(COHAT)の重要性、無麻酔歯石除去の限界、ホームケアによる予防を、一次情報源を示しながら総説としてまとめました。

犬猫の歯周病 — 病態・ステージ分類とCOHATの考え方 臨床総説のイメージ
Photo: Tima Miroshnichenko / Pexels

歯周病は犬猫で最も頻度の高い疾患の一つで、中高齢では多くの個体が何らかの段階を有します。痛みや感染源として見過ごされやすく、QOLと全身への影響も無視できません。本稿では病態とステージ、適切な診断・処置(COHAT)の考え方、予防の要点を整理します。

本記事の位置づけ(必読)
本記事は獣医師・動物看護師向けの一般的な学習用総説です。ステージ判定・処置・麻酔管理は症例と最新コンセンサスで異なります。実臨床ではAVDC/獣医歯科の標準的基準と各製剤の添付文書を必ず確認してください。

病態:バイオフィルムから歯周炎へ

歯面に形成されたプラーク(細菌のバイオフィルム)が歯肉に炎症を起こすのが歯肉炎で、この段階は可逆的です。炎症が歯周組織(歯根膜・歯槽骨)に及び、付着の喪失(アタッチメントロス)が起こると歯周炎となり、これは不可逆的です。歯石(石灰化したプラーク)はプラークの足場になり進行を助けます。

歯肉炎は可逆・歯周炎は不可逆
ケアの目標は『歯肉炎のうちに止める/予防する』ことです。失われた歯周組織は元に戻らないため、早期介入と日々のプラークコントロールが決定的に重要です。

ステージ分類の考え方

ステージ要点
Stage 0/1(健康〜歯肉炎)付着喪失なし。歯肉炎は可逆的
Stage 2(早期歯周炎)軽度の付着喪失(目安として25%未満)
Stage 3(中等度歯周炎)中等度の付着喪失
Stage 4(重度歯周炎)高度な付着喪失。抜歯が必要なことが多い

ステージは歯ごとに、プロービング(歯周ポケット深さ・付着喪失)と歯科レントゲンで評価します。目視だけでは歯肉縁下や歯槽骨の状態は分かりません。

診断と処置:COHATとは

適切な歯科診療は、全身麻酔下での包括的な口腔評価と処置(COHAT: Comprehensive Oral Health Assessment and Treatment)として行います。覚醒下では歯肉縁下のスケーリング・プロービング・レントゲン撮影ができず、評価も処置も不十分になるためです。

  1. 全身麻酔と適切なモニタリング・鎮痛(疼痛管理を含む)
  2. 全歯のプロービング、口腔内の精査、歯科レントゲン撮影
  3. 歯肉縁上・縁下のスケーリングとポリッシング
  4. 保存不能歯の抜歯など必要な処置
  5. 記録(チャート・レントゲン)とホームケア指導
無麻酔の歯石除去の限界
覚醒下での歯石除去(いわゆる無麻酔歯科)は、見た目を整えても歯肉縁下を処置できず、誤嚥・口腔損傷・見落としのリスクがあり、歯周病の治療・診断としては不十分とされています。麻酔リスクは術前評価とモニタリングで管理する考え方が標準です。

全身への影響と猫特有の病変

口腔内の慢性炎症・感染は痛みの原因であり、全身状態への影響も指摘されています。猫では破歯細胞性吸収病巣(FORL/吸収病巣)や口内炎など特有の痛みを伴う病変があり、食欲不振・流涎の鑑別として口腔精査が重要です。

予防:ホームケアが主役

  • 毎日の歯みがき(プラークコントロールの最も確実な方法)
  • VOHC等で有効性が示されたデンタル製品・療法食の活用
  • 定期的な口腔チェックとCOHATによる管理
  • 飼い主への動機づけと、無理のない習慣化の支援
学習のポイント
歯周病は『歯肉炎で止める予防の病気』であり、診断・処置は麻酔下のCOHATとレントゲンが前提です。見た目のスケーリングではなく歯肉縁下と歯槽骨を評価する——この視点と、毎日のホームケア指導が診療の質を決めます。

参考・一次情報源

  • AVDC(米国獣医歯科学会)の用語・ステージ分類
  • WSAVA Dental Guidelines
  • VOHC(Veterinary Oral Health Council)認定製品リスト
  • 日本小動物歯科研究会等の教育資料・セミナー

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