臨床総説Photo: Mikhail Nilov / Pexels
犬猫の歯周病 — 病態・ステージ分類とCOHATの考え方 臨床総説
犬猫で最も一般的な歯周病について、プラーク(バイオフィルム)から歯肉炎・歯周炎への進行、ステージ分類、全身麻酔下での口腔精査・歯科レントゲン(COHAT)の重要性、無麻酔歯石除去の限界、ホームケアによる予防を、一次情報源を示しながら総説としてまとめました。

歯周病は犬猫で最も頻度の高い疾患の一つで、中高齢では多くの個体が何らかの段階を有します。痛みや感染源として見過ごされやすく、QOLと全身への影響も無視できません。本稿では病態とステージ、適切な診断・処置(COHAT)の考え方、予防の要点を整理します。
病態:バイオフィルムから歯周炎へ
歯面に形成されたプラーク(細菌のバイオフィルム)が歯肉に炎症を起こすのが歯肉炎で、この段階は可逆的です。炎症が歯周組織(歯根膜・歯槽骨)に及び、付着の喪失(アタッチメントロス)が起こると歯周炎となり、これは不可逆的です。歯石(石灰化したプラーク)はプラークの足場になり進行を助けます。
ステージ分類の考え方
| ステージ | 要点 |
|---|---|
| Stage 0/1(健康〜歯肉炎) | 付着喪失なし。歯肉炎は可逆的 |
| Stage 2(早期歯周炎) | 軽度の付着喪失(目安として25%未満) |
| Stage 3(中等度歯周炎) | 中等度の付着喪失 |
| Stage 4(重度歯周炎) | 高度な付着喪失。抜歯が必要なことが多い |
ステージは歯ごとに、プロービング(歯周ポケット深さ・付着喪失)と歯科レントゲンで評価します。目視だけでは歯肉縁下や歯槽骨の状態は分かりません。
診断と処置:COHATとは
適切な歯科診療は、全身麻酔下での包括的な口腔評価と処置(COHAT: Comprehensive Oral Health Assessment and Treatment)として行います。覚醒下では歯肉縁下のスケーリング・プロービング・レントゲン撮影ができず、評価も処置も不十分になるためです。
- 全身麻酔と適切なモニタリング・鎮痛(疼痛管理を含む)
- 全歯のプロービング、口腔内の精査、歯科レントゲン撮影
- 歯肉縁上・縁下のスケーリングとポリッシング
- 保存不能歯の抜歯など必要な処置
- 記録(チャート・レントゲン)とホームケア指導
全身への影響と猫特有の病変
口腔内の慢性炎症・感染は痛みの原因であり、全身状態への影響も指摘されています。猫では破歯細胞性吸収病巣(FORL/吸収病巣)や口内炎など特有の痛みを伴う病変があり、食欲不振・流涎の鑑別として口腔精査が重要です。
予防:ホームケアが主役
- 毎日の歯みがき(プラークコントロールの最も確実な方法)
- VOHC等で有効性が示されたデンタル製品・療法食の活用
- 定期的な口腔チェックとCOHATによる管理
- 飼い主への動機づけと、無理のない習慣化の支援
参考・一次情報源
- AVDC(米国獣医歯科学会)の用語・ステージ分類
- WSAVA Dental Guidelines
- VOHC(Veterinary Oral Health Council)認定製品リスト
- 日本小動物歯科研究会等の教育資料・セミナー
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