予防医療Photo: Mikhail Nilov / Pexels
犬猫のワクチンプログラム — コアワクチンとWSAVAガイドラインの考え方
犬猫のワクチネーションについて、コア/ノンコアの分類、WSAVAガイドラインに基づく子犬・子猫の初回シリーズと16週齢以降の最終接種、成犬・成猫の追加接種間隔(抗体価検査の活用)、日本の狂犬病予防法との関係を、一次情報源を示しながら整理しました。

ワクチネーションは予防医療の中心であると同時に、『過不足なく、個体のリスクに応じて』設計すべき医療行為です。本稿ではWSAVA(世界小動物獣医師会)ワクチネーションガイドラインの考え方を軸に、コア/ノンコアの分類、子犬・子猫の初回シリーズ、成獣の追加接種、日本特有の狂犬病予防法との関係を整理します。
コアとノンコアの考え方
WSAVAはワクチンを『コア(すべての犬猫が接種すべき)』と『ノンコア(生活環境・地域・暴露リスクに応じて選択)』に大別します。コアは重篤・致死的で感染力が高い疾患を対象とし、ノンコアは個体のライフスタイルやリスク評価に基づいて推奨を判断します。
| 区分 | 犬 | 猫 |
|---|---|---|
| コア | ジステンパー(CDV)、アデノウイルス(CAV)、パルボウイルス(CPV) | パルボ(汎白血球減少症, FPV)、猫ヘルペス(FHV-1)、カリシ(FCV) |
| ノンコア(例) | レプトスピラ、パラインフルエンザ、ボルデテラ 等(地域・暴露で判断) | 猫白血病(FeLV)、猫クラミジア 等(暴露リスクで判断) |
| 法律で義務(日本) | 狂犬病 | — |
子犬・子猫の初回シリーズ
幼齢期は移行抗体(母子免疫)がワクチンの効果を妨げる一方、移行抗体が消失する時期には個体差があります。このギャップ(移行抗体は感染防御には不十分だがワクチンを中和してしまう期間)を埋めるため、複数回の接種シリーズを組み、最終接種を移行抗体が十分に消失する時期に行うのがWSAVAの基本的な考え方です。
成犬・成猫の追加接種(ブースター)
初回シリーズ完了後、概ね生後1年(または初回完了から約12か月)の追加接種で基礎免疫を固めます。その後のコアワクチン(生ウイルス)の追加は、毎年ではなく数年ごと(3年以上の間隔が許容される製品が多い)という考え方が主流です。一方、レプトスピラなど一部のノンコア(細菌・トキソイド系)は免疫持続が短く、リスクのある個体では年1回程度が必要になります。
- コア(生ウイルス):基礎免疫確立後は数年間隔での追加が許容される製品が多い
- ノンコア(レプトスピラ等):免疫持続が短く、リスク個体では年1回程度
- 間隔・回数は製品ごとに異なるため、必ず添付文書で確認する
抗体価検査(タイターチェック)の活用
犬のCDV・CAV・CPV、猫のFPVなどは抗体価検査で防御免疫の有無を推定でき、『不要な再接種を避ける』判断材料になります。ただし抗体価は防御の代理指標であり、抗体が検出されないこと=無防御とは限らない点、また抗体価で代替できない疾患もある点に注意します。
日本の狂犬病予防法との関係
日本では狂犬病予防法により、飼い犬の登録と年1回の狂犬病ワクチン接種が法律で義務づけられています。これはWSAVAの『コア/ノンコア』の医学的議論とは別レイヤーの法的義務であり、混合ワクチンの接種設計とは切り分けて、飼い主に確実に説明・実施する必要があります。
副反応とインフォームド・コンセント
- 接種後は一定時間院内または近隣で経過観察し、急性反応(顔面腫脹、嘔吐、虚脱=アナフィラキシー)に備える
- 接種部位・記録(製品名・ロット・部位)を残し、有害事象は報告する
- 猫では注射部位肉腫のリスクに配慮し、推奨される接種部位・手技に従う
- 高齢・基礎疾患のある個体ではリスクとベネフィットを個別に説明する
参考・一次情報源
- WSAVA Vaccination Guidelines(犬猫のワクチネーションガイドライン)
- AAHA Canine Vaccination Guidelines / AAFP Feline Vaccination Guidelines
- 各ワクチン製剤の添付文書(接種スケジュール・適応・間隔)
- 厚生労働省・自治体による狂犬病予防法の案内
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