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感染症🐖
感染症🐄 産業動物2026-06-09・約8分で読めます

豚熱(CSF)とは — 家畜伝染病としての対策・ワクチン、アフリカ豚熱(ASF)との違い

豚熱(CSF, Classical Swine Fever)は豚・イノシシに高い死亡率をもたらすウイルス性の家畜伝染病で、人には感染しません。2018年の国内再発生以降の野生イノシシでの拡大、症状、家畜伝染病予防法に基づく届出と防疫、経口ワクチン散布・飼養豚へのワクチン接種、そしてアフリカ豚熱(ASF)との違いを、一次情報源を示しながら整理します。

文:獣医求人ポスト編集部公開 2026-06-09
目次
  1. 豚熱とはどんな病気か
  2. 国内での再発生と野生イノシシ
  3. 主な症状
  4. 発生を疑ったときの流れ(防疫の枠組み)
  5. ワクチンと飼養衛生管理
  6. アフリカ豚熱(ASF)との違い
  7. 獣医師・産業動物獣医療の役割
  8. 参考文献・一次情報源
豚熱(CSF)とは — 家畜伝染病としての対策・ワクチン、アフリカ豚熱(ASF)との違いのイメージ
Photo: Jose Centenera / Pexels

豚熱(とんねつ/CSF: Classical Swine Fever、かつての呼称は『豚コレラ』)は、豚とイノシシに発熱や全身症状を引き起こし、高い死亡率をもたらすウイルス性の伝染病です。家畜伝染病予防法に基づく法定伝染病であり、発生は経済・防疫の両面で大きな影響を持ちます。一方で人には感染せず、感染豚の肉を食べても人体に影響はありません。本稿では制度と現場対応の枠組み、ワクチン、そしてしばしば混同されるアフリカ豚熱(ASF)との違いを整理します。

本記事の位置づけ(必読)
本記事は豚熱の概要を学習用に整理したものです。発生状況・ワクチン接種推奨地域・防疫措置・飼養衛生管理基準は通知や指針の改正で随時変わります。実務では農林水産省および各都道府県・家畜保健衛生所の最新情報を必ず確認してください。発生を疑った場合の通報は法令上の義務です。

豚熱とはどんな病気か

原因はフラビウイルス科ペスチウイルス属の豚熱ウイルス(CSFV)です。感染豚の排泄物・体液、汚染した飼料・器材・車両・人を介して伝播し、野生イノシシが感染源・拡散の役割を担うことがあります。潜伏期は数日〜程度で、急性型では高い致死率を示す一方、低病原性株では慢性・不顕性の経過をとり、見逃されやすいのが特徴です。

2018年
国内で26年ぶりに発生(岐阜県)
豚・イノシシ
感受性動物(人には感染しない)
法定伝染病
家畜伝染病予防法に基づく届出対象

国内での再発生と野生イノシシ

国内では長く清浄状態が続いていましたが、2018年9月に岐阜県の養豚場で発生が確認され、26年ぶりの再発生となりました。その後、野生イノシシでの感染が広域に確認され、養豚場での発生も各地に及びました。野生イノシシでウイルスが循環すると、養豚場への侵入リスクが長期にわたって続くため、飼養衛生管理と野生イノシシ対策の両輪が重要になります。

主な症状

  • 発熱、元気消失、食欲不振、群れからの離脱
  • 便秘に続く下痢、嘔吐などの消化器症状
  • 結膜炎、皮膚(耳・四肢・腹部)の発赤・点状出血・チアノーゼ
  • ふらつき・けいれんなどの神経症状(一部)
  • 妊娠豚の流死産・繁殖障害、子豚の高い死亡率
  • 低病原性株では発育不良・慢性消耗にとどまり不顕性のこともある
『非特異的な症状+複数頭での発熱・死亡』が疑いの入口
豚熱の症状は他の疾病と重なり特異的ではありません。複数頭での発熱・食欲不振・死亡の増加など『いつもと違う』異常に早く気づき、自家判断で経過観察せずに通報・相談につなげることが早期摘発の鍵です。

発生を疑ったときの流れ(防疫の枠組み)

早期通報から防疫措置まで
異常の発見(複数頭の発熱・死亡増加など)
家畜保健衛生所・都道府県へ通報(届出は義務)
立入検査・PCR等による検査・診断
移動制限・搬出制限、消毒の徹底
発生農場での殺処分・埋却等の防疫措置
疫学調査・清浄性確認

豚熱は家畜伝染病予防法上の法定伝染病で、発生やその疑いを認めた場合の通報が求められます。確定診断や防疫措置は特定家畜伝染病防疫指針に沿って、行政(家畜保健衛生所・都道府県・国)主導で進められます。

ワクチンと飼養衛生管理

豚熱には有効な弱毒生ワクチンがあり、これがアフリカ豚熱との大きな違いです。日本では、野生イノシシに対する経口ワクチンの散布と、リスクの高い地域での飼養豚への予防的ワクチン接種(ワクチン接種推奨地域の設定)が組み合わされてきました。接種推奨地域や運用は状況に応じて見直されるため、最新の指定を確認します。

  • 飼養衛生管理基準の順守:人・車両・物品・野生動物の侵入防止、消毒、長靴・衣服の交換
  • 野生イノシシ対策:防護柵、経口ワクチン散布、捕獲・サーベイランス
  • 飼養豚へのワクチン接種(接種推奨地域)と接種記録の管理
  • 早期発見のための日常的な健康観察と異常時の即時通報

アフリカ豚熱(ASF)との違い

豚熱(CSF)とアフリカ豚熱(ASF)は名前が似ていますが、原因ウイルスも対策も異なります。ASFはアスファウイルス科の別ウイルスによる病気で、有効なワクチンが実用化されておらず、致死率が極めて高いのが特徴です。日本はASFについては清浄を維持しており、海外からの肉製品等を介した侵入を防ぐ水際対策が最重要となります。いずれも人には感染しません。

項目豚熱(CSF)アフリカ豚熱(ASF)
原因ウイルスペスチウイルス属(フラビウイルス科)アスファウイルス(別系統)
ワクチンあり(弱毒生ワクチン・経口ワクチン)実用的なワクチンは確立途上
致死率株により幅(急性型は高い)非常に高い
日本の状況2018年に再発生、防疫・ワクチンで対応中未発生(清浄)。水際対策が最重要
人への感染なしなし
媒介・伝播接触・汚染物・野生イノシシ等接触・汚染物・ダニ(軟ダニ)等
ASFはワクチンが頼れない=『入れない』対策がすべて
CSFはワクチンという手段があるのに対し、ASFは実用ワクチンが乏しく、侵入させない水際・農場バイオセキュリティが防御の中心です。海外からの畜産物の持ち込み禁止や、農場での人・車両・残飯(食品残さ)の管理が決定的に重要になります。

獣医師・産業動物獣医療の役割

  • 農場での飼養衛生管理の指導と、早期発見のための健康観察体制づくり
  • 異常時の迅速な通報・行政(家畜保健衛生所)との連携
  • ワクチン接種・記録管理の支援(接種推奨地域)
  • 農場従事者・関係者へのバイオセキュリティ教育(消毒・動線管理)
  • ASF侵入防止の観点を含めた、地域全体の防疫意識の醸成
学習のポイント
押さえるべきは『豚熱は人に感染しない法定伝染病』『2018年に国内再発生し野生イノシシで循環』『CSFはワクチンあり/ASFはワクチンに頼れず水際が要』という3点と、早期通報が法令上の義務であることです。CSFとASFを混同せず、原因・対策の違いを説明できるようにしておきましょう。

家畜の感染症対策は、産業動物獣医療や公衆衛生の最前線です。家畜防疫や群管理に関わる仕事に関心があるなら、獣医求人ポストで産業動物・公務員(家畜保健衛生所)などの求人も比較できます。

参考文献・一次情報源

  1. 豚熱(CSF)について(発生状況・防疫対策・ワクチン接種推奨地域)(農林水産省)
  2. 特定家畜伝染病防疫指針(豚熱・アフリカ豚熱)/家畜伝染病予防法(農林水産省)
  3. Classical swine fever / African swine fever(OIE/WOAH 陸生動物衛生コード・技術情報)(WOAH(旧 OIE))
  4. 飼養衛生管理基準(豚・いのしし)(農林水産省)

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