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感染症🐀
感染症🛡️ 予防医療2026-06-09・約8分で読めます

レプトスピラ症と犬・人 — 急性腎障害を起こす人獣共通感染症、診断・治療・ワクチン予防

レプトスピラ症はスピロヘータ(レプトスピラ属細菌)による人獣共通感染症で、犬では急性腎障害(AKI)や肝障害、肺出血を起こすことがあります。げっ歯類などが保菌し、汚染した水・土・尿を介して犬や人に感染します。感染経路、犬・猫での症状、MAT/PCRによる診断、抗菌薬と支持療法、ワクチン(ノンコア)による予防、動物病院での職業感染対策を、一次情報源を示しながら整理します。

文:獣医求人ポスト編集部公開 2026-06-09
目次
  1. レプトスピラ症とは — 病原体と血清型
  2. 感染経路 — げっ歯類と水たまり
  3. 犬での症状
  4. 猫での位置づけ
  5. なぜ動物病院で重要か — 人への感染(職業曝露)
  6. 診断の考え方
  7. 治療の原則(具体は最新指針で)
  8. 予防 — ワクチンと環境対策
  9. 動物病院での感染対策
  10. 参考文献・一次情報源
レプトスピラ症と犬・人 — 急性腎障害を起こす人獣共通感染症、診断・治療・ワクチン予防のイメージ
Photo: Samson Katt / Pexels

レプトスピラ症は、らせん状の細菌(スピロヘータ)であるレプトスピラ属の病原性菌による人獣共通感染症です。犬では急性腎障害(AKI)や肝障害を引き起こし、ときに致死的な経過をたどる重要な疾患です。げっ歯類などの保菌動物が尿中に菌を排出し、汚染された水・土壌・尿との接触を通じて犬や人に感染します。本稿では感染経路、犬猫での病態、診断・治療の考え方、ワクチンによる予防、そして動物病院での職業感染対策を整理します。

本記事の位置づけ(必読)
本記事はレプトスピラ症の概要を学習用に整理したものです。診断の解釈(血清型・ワクチン歴によるMATの読み方)、抗菌薬の選択・用量、支持療法の方針は、最新のコンセンサスステートメントや添付文書、地域の疫学に基づいて判断する必要があります。具体的な薬剤・用量や検査運用は必ず最新の一次情報をご確認ください。届出・公衆衛生対応は保健所・自治体と連携します。

レプトスピラ症とは — 病原体と血清型

原因は病原性レプトスピラ(Leptospira interrogans など)で、多数の血清型(serovar)・血清群が存在します(Canicola、Icterohaemorrhagiae、Grippotyphosa、Pomona、Australis など)。血清型ごとに主な保菌動物(リザーバー)が異なり、地域で流行する血清型も変化します。この『血清型が多い』点が、診断(血清反応の解釈)とワクチン(カバーする血清群の選択)の両方に影響します。

人獣共通
犬・人ほか多くの哺乳類が感染
尿・水
保菌動物の尿で汚染された環境が感染源
AKI
犬の急性腎障害の重要な鑑別疾患

感染経路 — げっ歯類と水たまり

保菌動物(とくにネズミなどのげっ歯類)が尿中に菌を排出し、汚染された水・泥・土壌を介して感染が広がります。菌は粘膜や傷ついた皮膚から侵入します。雨後の水たまりや川・側溝、湿潤な環境、屋外活動、げっ歯類の多い環境がリスクとなり、温暖・多雨の時期に増える傾向があります。

  • 保菌動物(げっ歯類など)の尿で汚染された水・土壌との接触
  • 粘膜(口・眼・鼻)や創傷を介した菌の侵入
  • 止水・河川・側溝など湿潤環境での屋外活動
  • 汚染された環境を共有する他の動物・人への波及

犬での症状

犬では不顕性〜重症まで幅があります。代表的なのは急性腎障害(AKI)で、急性の腎不全像(乏尿・無尿、嘔吐、脱水、尿毒症)を呈します。肝障害(黄疸)を伴うこともあり、重症例では肺出血症候群(喀血・呼吸困難)や出血傾向を示すことがあります。発熱、元気・食欲低下、筋肉痛様のこわばりなど非特異的な症状で来院することも少なくありません。

  • 急性腎障害(AKI):乏尿・無尿、嘔吐、脱水、尿毒症
  • 肝障害:黄疸、肝酵素上昇
  • 重症例:肺出血症候群(喀血・呼吸困難)、出血傾向・血小板減少
  • 全身症状:発熱、元気消失、食欲不振、筋のこわばり
『若〜中齢犬の急性腎障害+肝障害/屋外・水への曝露』はレプトを想起
とくに屋外活動や水辺・げっ歯類への曝露がある犬で、急性に腎障害(しばしば肝障害を伴う)を呈する場合は、鑑別にレプトスピラ症を含めて考えます。人獣共通感染症であるため、疑った時点から尿・体液への曝露を避ける対応に切り替えるのが安全です。

猫での位置づけ

猫は感染しても明らかな臨床症状を示すことは比較的まれと考えられていますが、感染・菌の排出が起こりうることが報告されています。犬ほど臨床的に問題になる場面は多くないものの、疫学・公衆衛生の観点からは無視できません。

なぜ動物病院で重要か — 人への感染(職業曝露)

レプトスピラ症は人にも感染し、軽症から、黄疸・腎障害・出血を伴う重症型(ワイル病)まで幅があります。人のレプトスピラ症は感染症法上の四類感染症で、診断した医師による届出の対象です。動物病院では、感染犬の尿や血液・体液に触れることで獣医療従事者が感染するリスクがあり、職業感染として注意が必要です。日本では沖縄や西日本などでの発生、レジャー(川遊び等)に関連した感染が知られています。

診断の考え方

疑い〜診断の基本的な流れ
病歴(屋外・水・げっ歯類への曝露、ワクチン歴)と臨床像(AKI±肝障害)
一般検査:腎・肝指標、血球(血小板減少)、尿検査
血清学的検査(MAT:ペア血清で抗体価の上昇を評価)
PCR(早期は血液、経過後は尿で検出されやすい)
ワクチン歴を踏まえた抗体価の慎重な解釈・行政/専門機関との連携
MATの解釈はワクチン歴に注意
MAT(顕微鏡下凝集試験)はペア血清での抗体価の有意な上昇で評価しますが、ワクチン接種後にも抗体価が上がるため、単一時点の値だけでの判断は誤りのもとです。検査の選択(血清/PCR)や解釈はタイミングとワクチン歴に依存するため、最新の指針に沿って組み立てます。

治療の原則(具体は最新指針で)

治療は抗菌薬による菌の排除と、急性腎障害・肝障害に対する支持療法が柱です。抗菌薬はドキシサイクリンやペニシリン系などが用いられますが、選択・用量・期間は最新のコンセンサスステートメントと添付文書に従います。重症のAKIでは輸液管理に加え、尿量や電解質の厳密な管理、場合により血液浄化(透析)が検討されます。早期の適切な治療が予後を左右します。

予防 — ワクチンと環境対策

レプトスピラワクチンはWSAVAの分類でノンコア(地域・生活様式のリスクに応じて接種を検討)に位置づけられます。ベース部分の免疫が短めで、リスクのある犬では定期的な追加接種が必要です。また、ワクチンは含まれる血清群に対する予防であり、すべての血清型を等しくカバーするわけではない点も理解しておきます。環境面では、げっ歯類対策、止水・汚染水へのアクセス制限が重要です。

  • ワクチン接種(ノンコア/地域の流行血清群とリスクに応じて、定期追加接種)
  • げっ歯類の管理、飼育環境・水場の衛生
  • 止水・側溝・汚染が疑われる水へのアクセス制限
  • 飼い主への啓発(屋外・水辺活動のリスク、尿の取り扱い)

動物病院での感染対策

  • 疑い症例では手袋・ガウン・マスク・眼の保護を着用し、尿・血液・体液への曝露を避ける
  • 排尿・ケージ・床の汚染管理と確実な消毒、廃棄物・リネンの適切な処理
  • 針刺し・咬傷・粘膜曝露の防止と、曝露時の手指衛生・洗浄
  • 曝露が疑われたスタッフの体調観察と医療機関への相談(曝露後対応は医師判断)
  • 飼い主にも家庭内での尿の取り扱い・手指衛生を案内
学習のポイント
要点は『犬の急性腎障害(±肝障害)の重要な鑑別』『げっ歯類・汚染水を介する人獣共通感染症(人では四類・ワイル病)』『MATはペア血清+ワクチン歴に注意』『ワクチンはノンコアで血清群限定・定期追加が必要』の4点です。疑った時点から尿・体液曝露を避け、One Healthの視点で飼い主・スタッフを守りましょう。

人獣共通感染症への備えは、スタッフと地域の安全を守る臨床力です。感染対策や継続教育に力を入れる職場を探すなら、獣医求人ポストで研修・衛生管理体制の整った求人を比較できます。

参考文献・一次情報源

  1. ACVIM Small Animal Consensus Statement on Leptospirosis(犬のレプトスピラ症コンセンサスステートメント)(ACVIM(J Vet Intern Med))
  2. WSAVA Vaccination Guidelines(レプトスピラはノンコアワクチンとして整理)(WSAVA)
  3. レプトスピラ症(病原体・発生動向・予防)に関する情報(国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所))
  4. レプトスピラ症(四類感染症)/動物由来感染症に関する情報(厚生労働省)

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